個別伴走支援

個別伴走支援

筑波大学TRiSTARのGPである「個別伴走支援」(以降、本取組と記載)では、TRiSTARフェローが「トランスボーダー型研究者」を目指し、URA、PMと密にコミュニケーションを取り合いながら、様々な可能性をともに検討します。

この度、総合支援事業事務局が個別伴走支援の一環として行われる筑波大学のPM面談を見学し、本取組についてTRiSTARのPMである梅村雅之先生、TRiSTAR事務局秘書の榎本美由貴様、筑波大学 研究マネジメント室 チーフ・リサーチ・アドミニストレーターの鳥羽岳太様、お茶の水女子大学 リエゾン・URAセンター リサーチ・アドミニストレーターの森かずみ様にインタビューを行いました。

※先生方の所属・役職はすべてインタビュー時のものです

個別伴走支援(PM面談)を開始した理由・背景

梅村雅之先生(以降、梅村):

筑波大学では研究者の支援として外部資金獲得のためのサポートや様々な研究の支援を行ってきました。その中で、改めてフェローのポテンシャルをより活かせるような支援の在り方を考えたとき、まずはフェローに寄り添い、フェローが考えていることをしっかりとお聞きすることが必要だと考えました。その上で、TRiSTARコンソーシアムが持っている情報を提示することで新たな連携の可能性や、研究分野を超えた新しい取組が生まれてくることを目指しました。

フェローの先生方は、実に多様な連携・分野横断研究の可能性を持っていますが、日常的な研究活動の中では、他分野との連携を考える機会はそこまで多くないため、この可能性に気づけないことが多いのです。そこで、フェローの可能性を広げるために、TRiSTARプログラムが橋渡しとなって支援できる内容を検討していきたいと考えたことが本取組を始めたきっかけです。

梅村雅之先生(筑波大学 研究戦略イニシアティブ推進機構
研究マネジメント室 特命教授 / TRiSTAR PM)

事務局:

まずはその研究者が置かれている状況や考えていることをよく知り、可能性を広げるためにどのようなことができるかを一緒になって考えるということですね。

目標やKPIに縛られない研究

事務局:

本取組を始めるにあたっては、どのような育成効果が出ることを期待していたのでしょうか?

梅村:

本取組は何か具体的な効果を想定して始めたものではないんです。

効果が想定できるような取組は、すでに何かしらの形で実施されていることが多いです。そのため、どのような効果が出るかを想定せず、フェローが自由にやりたいことを考え、それを実現できるようサポートするような取組を実施するべきだと考えました。

まずは、フェローの先生方にご自身の研究が、様々な分野で連携の可能性があることを知ってもらい、あとはフェローの先生方それぞれのやり方でご自身の可能性を広げていってほしいと考えています。

我々TRiSTARは、研究においてはあえてKPIを設定しないことにも意味があると考えています。しっかりと定まった目標に向かって前進していくのではなく、無限大の自由度の中で自分の研究の可能性を追求することで、成果につながってくるのだと考えています。TRiSTARで掲げている「専門深化力」「俯瞰力」「マネジメント力」もこの考えに基づいており、専門深化を進めることで、その先に広がる新たな発想や可能性が見つかり、他分野との連携の可能性が出てくるのだと思います。

私が登壇した+αシリーズウェビナーでも失敗から生まれたノーベル賞のお話しさせていただきましたが、想定していないところから生まれるアイデアが大きな発見につながる可能性は十分にあります。フェローの先生方にはTRiSTARプログラムの中で、このようなセレンディピティも含めて追及していってほしいと考えています。

事務局:

あえて取組を目標やKPIで縛らず、幅を持たせて自由に実施することで、様々な効果が出ることを期待しているのですね。

梅村:

対外的な説明をするときは、いわゆるKPIが効果を示す指標として明確であるため、重視されがちですが、若手研究者の育成においては、KPIには表れない部分を育てていく必要もあると思います。

例えば、研究ネットワークが広がることは研究者にとって非常に大きな財産になるのですが、KPIでは評価されません。

特定の分野だけで国を動かすことができないのと同じように、研究においても一つの分野だけで大きな成果につなげることはできないのです。

より多くの分野に触れ、広い視点で物事をとらえて自分の研究を続けることが重要であり、このような研究者をこれから育てていかないといけないんじゃないかと思います。

お茶の水女子大学所属フェローの河嵜唯衣先生とのPM面談の様子
お茶の水女子大学所属フェローの河嵜唯衣先生とのPM面談の様子
お茶の水女子大学所属フェローの河嵜唯衣先生とのPM面談の様子

研究の専門深化と他分野への橋渡しの両方をサポート

事務局:

本取組を取り入れたいと考える他大学に向けて、効果的に実施するためのポイントやTips、気を付けたほうがよい点などはありますか?

梅村:

本取組に限った話ではないと思いますが、フェローの研究の専門深化と橋渡しをセットで考えることが、研究者を育成していく上では、非常に重要になると思います。

TRiSTARでは個別伴走支援のほかにも共創リレーセミナーなどの様々な取組を実施しており、フェローの先生方はそのような取組の中で他分野に対して自身の研究内容を発信します。

その経験をもとに、個別伴走支援では自分の研究を更に深掘り、他分野の研究者に伝えるためにはどうすればよいのか、他の分野とどのような連携が図れるのかを考えていきます。

ですので、他分野との連携は一つの独立した事象ではなく、自身の研究を深堀することとセットであることを強く意識し、研究の専門深化と他分野との橋渡しを両方サポートすることが、研究者を育成していく上での一つのTipsになると思います。

鳥羽岳太様(以降、鳥羽)

同じ若手研究者とはいえど、研究分野によってその研究者を取り巻く環境や事情は大きく異なります。それぞれの研究者に寄り添った支援を行うため、TRiSTARでは、運営側から各フェローに目標を与えるのではなく、フェロー自身に研究の目標を決めてもらい、その目標を達成できるようにテーラーメイド式にサポートを行っているのです。

ある意味当たり前かもしれませんが、個々の研究者の事情に寄り添い、配慮を欠かさないことが本取組を実施する上でのTipsになるのではないかと思います。

鳥羽岳太様(筑波大学 研究戦略イニシアティブ推進機構
研究マネジメント室 チーフ・リサーチ・アドミニストレーター)

榎本美由貴様(以降、榎本):

本取組の一環であるPM面談はオンラインではなく、対面で実施することにしています。

筑波大学のフェローは学内の公募スペースを利用したTRiSTARサロンという共創の場で面談を行い、他機関に所属するフェローに対しては、実際にPMを含めた運営側のメンバーがフェローの所属機関に伺い、面談を実施します。こうすることで、フェローの先生方を取り巻く多種多様な研究環境や事情を深く知ることができるとともに、フェローの所属機関の雰囲気や空気感を肌で感じることができます。

また、面談の前後も含め雑談などを通してフェローの人間性を知ることができるため、その後の伴走支援が格段にやりやすくなります。そういう意味でも、オンラインではなく対面で実施することは本取組を効果的に支援する上での大きなポイントだと思います。

榎本美由貴様(筑波大学 研究戦略イニシアティブ推進機構
研究マネジメント室 TRiSTAR事務局 秘書)

事務局:

共同実施機関の目線から、PM面談の効果としてはどのようなものがあるとお考えでしょうか?

森かずみ様(以降、森):

PMの先生と直接お話をする機会を持つことで、フェローは自身の研究の発展性や連携の可能性をより具体的にイメージをすることができると思います。

また、TRiSTARの枠組みを超えた連携の実現にもPM面談は役立っていると感じます。フェローは、「世界で活躍できる研究者戦略育成事業」に参画している他機関のフェローと連携する可能性があることは把握していると思いますが、自ら連携に向けた一歩を踏み出すまでは至らないのが現状です。しかし、PM面談を通して、大きく背中を押してもらえることで、TRiSTARの枠組みを超えた連携への第一歩を踏み出すことができると思います。

個別伴走支援の過程で梅村先生や鳥羽様とお話をすることを通し、所属機関の外の視点に触れることができるため、非常によい刺激となっているように感じます。

森かずみ様(お茶の水女子大学 リエゾン・URAセンター リサーチ・アドミニストレーター)

事務局:

なかなか自分から研究ネットワークを作りたがらない研究者に対しては、多少強引にでもネットワーキングの機会を与えたほうが、よい結果につながるのでしょうか?

森:

面談などで外部からの刺激を受けて機敏に動き始めることができる研究者もいれば、いただいたアドバイスを一度自分でじっくり考えてから行動に移す研究者もいるので、コミュニケーションをとりながらその研究者に合ったアプローチをとることが最も効果的だと思います。

事務局:

PM面談のほかにもURA面談などがあると思いますが、このような面談の中で把握したフェローのキャラクターを運営側のメンバーで情報共有することはあるのでしょうか?

森:

お茶の水女子大学に関しては、TRiSTARを担当するURAは私一人ですが、フェローのキャラクターや進捗状況などの情報共有は必要に応じて行っています。

TRiSTAR育成対象者への応募の申請書を書く段階から実際に申請を出すまでに、十分にコミュニケーションをとる機会がありますので、その中でフェローのキャラクターをつかみ、そのフェローにあった対応をするようにしています。

梅村先生や鳥羽様にも、事前に情報を共有するというよりは実際にフェローとの会話を通して、その先生のキャラクターを把握していただいています。

運営側が得るもの

事務局:

本取組の実施にあたり、何か特別に予算を用意する必要があれば教えてください。

梅村:

面談は対面で実施することを心掛けておりますので、交通費などの経費は必要となりますが、特別大きな予算が必要ということは全くありません。対面で面談を行うことで、フェローと密なコミュニケーションが取れるだけでなく、運営側のメンバーも様々なものを得ることができます。

対面でフェローを訪ねるときは、そのフェローの研究室などを見学させていただくことも多く、運営側のメンバーもその研究分野に対する理解を深めることができるのです。このようにして蓄積した運営側の研究分野に対する知識は、他のフェローとの連携の橋渡しをする際のアドバイスなどに活かされます。

伴走支援をするからには現場でどのような研究がおこなわれているかを深く理解する必要があり、対面でコミュニケーションをとることが運営側の成長にもつながってくるのです。TRiSTARとしては、大きな経費をかけなくても実はできることがたくさんあることを、より多くの大学に知ってほしいと考えています。

筑波大学所属フェローの北尾仁宏先生とのPM面談の様子
筑波大学所属フェローの北尾仁宏先生とのPM面談の様子

筑波大学所属フェローの北尾仁宏先生とのPM面談の様子

情報の価値

事務局:

本取組は小さなコストでとても大きな効果を発揮していると思いますが、これはTRiSTARとして周辺の大学と協力しているから実現できているのでしょうか?

他大学が単独で本取組を取り入れる際にも同じようなコスト感で実現が可能なのでしょうか?

梅村:

ローコストで本取組が実現できている大きな理由として、情報に対価を払っていないことがあげられます。

実は情報は非常に価値の高いもので、もし情報に対価を払わなければならないなら、それこそとんでもない値段となってしまうと思います。しかし、TRiSTARではネットワークを通じてお互いに情報を共有することができるので、本取組は高いコストパフォーマンスを発揮することができます。

逆に言えば、同様の取組を行っている機関同士が手を取り合い、情報を集約することで、さらなる相乗効果が期待できるというわけです。

事務局:

つまり、A大学だけで本取組を実施するのではなく、A大学・B大学・C大学が連携することでより効果の高い取組となるのですね。

梅村:

そのとおりです。もっと言えば、オールジャパンで本取組を実施できれば、はかり知れない効果が生まれると思います。

とはいえ、単大学での実現が不可能かというとそんなことは全くありません。

情報共有の壁は組織間のみで発生するものではなく、組織内の分野間でも発生しうる問題です。筑波大学の内部でもこのような分野間の壁は大きく、シナジーを十分に発揮しきれていない現状があります。TRiSTARではこの壁を取り除くために様々な取組を行っており、本取組もそのうちの一つといえるでしょう。

単大学での実施であったとしても分野間の壁を取り除くことなど、十分な効果が期待できると思いますので、ぜひ多くの大学に取り入れていただきたい取組となっております。