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IDPを基本とする育成フロー

IDPを基本とする育成フロー

あらゆる業界の人材開発において汎用されている “Individual Development Plan”(IDP)。IDPは、個人の自己成長とキャリアの発展を促進することを目的とし、明確な目標と計画を立てることにより、実行する際に役立てるように設計された人材マネジメントツールのひとつです。個人の目標実現に向け組織的で体系的なアプローチが可能となるため、欧米諸国では、研究やアカデミアの世界においても研究者のパフォーマンスの向上を図る際にIDPを組織的に導入しているケースが多く、IDPが研究者のキャリア開発において有用なツールとして認識されています。

広島大学HIRAKU-Globalでは、キャリア初期の研究者向けにIDPの原理に基づく方法を独自にカスタマイズした「IDPを基本とする育成フロー」を開発し、研究者とともに実践に取り組んでいます。

概要

広島大学HIRAKU-Globalでは、フェローに採択されたキャリア初期の研究者に対して、5年間のサポートを行い、10年先には国際研究チームを率いるような世界クラスの研究者に成長できるような研究者育成プログラムを提供しています。そのプログラムのひとつが「IDPを基本とする育成フロー」です。サポート開始時には、IDPを使って、まず、今後の研究活動や向かうべき目標について、自己をあらためてしっかりと認識することから始めます。

研究者が自身で作成したIDPは、コンソーシアムメンターに共有され、研究者とメンターとの1対1の対話(メンター面談)を通し客観的な助言を得て、必要に応じて、自身で修正します。その後、毎年の進捗状況をメンターとともに確認し、進捗状況と必要に応じて、研究者自身でIDPを随時更新します。3年目には、HIRAKU-Globalとして、進捗状況を可視化したAchievement CardとAWRAを作成し研究者に対する中間評価を行い、5年目には修了評価を行います。

  • 1年目:研究者がIDPを作成、メンターがIDPに対し助言、IDP更新
  • 2年目:進捗状況をメンターと確認、必要に応じIDP更新
  • 3年目:パフォーマンスレビュー(Achievement Card、AWRAの作成と、それに基づく中間評価)、必要に応じIDP更新
  • 4年目:進捗状況をメンターと確認、必要に応じIDP更新
  • 最終年:パフォーマンスレビュー(Achievement Card、AWRAの作成と、それに基づく修了評価)

このフローによって自己を管理する習慣がつくことや、コンソーシアムメンターのような大局的な見地をもった利害関係のない第三者からの客観的なフィードバックやアドバイスを通じて、研究者は成長の方向性を確認し、効果的な計画の立て方を学ぶことができます。自己内省による学びは、研究者のモチベーションや意欲の向上に大きく影響し、研究パフォーマンスの向上に繋がることが期待されています。

HIRAKU-GlobalオリジナルIDPのテンプレートとは

IDPの原理の一つは、個人が自身のスキル、能力、強み、および成長の領域を評価し、それに基づいて具体的で実現可能な目標を設定することです。広島大学HIRAKU-GlobalのIDPは次の4つの構成でできており、「キャリア初期の研究者が将来世界クラスの研究者となるため」のこの先10年間の目標・活動計画・涵養すべき能力を英語で記述する構造になっています。

①目標設定: ビジョン/中長期計画 Individual Development Plan

【Future Goal/s】What is the vision of your research for the next 10 years and beyond to help you establish your pathway to becoming a world-class researcher?

【Long-Term Action Plan/s】Write down the five-year milestones you are aiming to accomplish in order to achieve the aforementioned future goals.

【Short-Term Action Plan/s】What is/are your short-term plan/s for the next 12 to 24 months to achieve the five-year milestones listed above?

②研究計画: 共同研究者候補/ネットワーク構築計画 Research Plan/s in line with the HIRAKU-Global Program

【Potential Partner/s】List the potential partner/s as you are planning to conduct international collaboration with for the coming 12 to 24 months. If you haven’t established any plans yet, please state at such

【Team Building Plan/s】How are you planning to build your research team with the above listed potential partners to achieve your future action plans?

③資金計画: 研究費の活用計画/資金獲得計画 Financial Plan/s within the HIRAKU-Global Program

【Financial Management Plan/s】How are you planning to use your start-up funds and international collaborative research related funds which are to be provided by the HIRAKU-Global Program, to deliver upon your plans list of the above?

【Funding Resources】List all of the financial resources currently available for use by you (grants, start-up funds, etc.).

【Funding Plan】List the funding opportunities that you are planning to apply for in the coming 12 to 24 months.

④トランスファラブルスキル: 養成すべき能力の認識 Personal Development

Perform a self-analysis, which will help you to better understand your current state of development. It will also help you to realize what competencies you think you need to develop to attain your vision.

【Strong Competencies】What do you consider to be your strongest competencies?

【Competencies to Improve】Describe which competencies you think you need to develop to advance in your career.

【Transferable Competences】What other skills or competencies would you like to further develop within the HIRAKU-Global Program?

HIRAKU-Global IDPテンプレート

Achievement Cardによるパフォーマンスレビュー

IDPに描いたアクションプランの進捗状況を定期的に振り返るために、広島大学HIRAKU-Globalは、研究者のパフォーマンスを経時的に可視化できるAchievement Cardも同時に開発しました。 IDPは定期的に評価され、必要に応じて修正されます。研究者は進捗を追跡し、達成した目標を振り返り、新しい目標を設定することで、効果的な軌道修正を図ることができます。

Achievement Cardは、以下の項目から構成されています。

  • IDP概要(ビジョン、短期/長期行動計画について、各研究者のIDPから抜粋した概要を掲載)
  • Activity Record(年度経過がわかるように記載、可能なものは事務サイドが予め作成しておく。詳細な参照データは研究者からの提出、及び、事務サイドで公開DB等から取得することにより、事務的に作成する)
    1. SCI等論文(育成開始の前年までと育成開始年以降各発行年別に、筆頭あるいは責任著者の論文数とその他の論文数、及び、その論文誌の分野別のIFの位置づけ)
    2. 研究資金(種類別,総額(直接経費+間接経費)明示)(各大学の通常校費は記載しない)
    3. 国際的な研究交流(海外渡航の実績、オンライン打合せ含む)
    4. 招待講演(国際的な学会)(国内学会でも英語で発表した招待講演を含む)
    5. HIRAKU-Global活動への参画(年度別に記載)
    6. 特記事項(産学連携等、メディアへの掲載や分野特性も考慮し特記すべき業績など)
  • ⅰ〜ⅲについて、IDPに記載のaction planを踏まえた、研究者自身によるコメントと自己評価(4段階)
  • 研究者自身による総合的な自己評価コメント
    • 総合的なコメント(HIRAKU-Global への参加前と比べて、参加したことによってどのような影響を受け、どのように変わったのかについて、端的に記載)
    • HIRAKU-Global プログラムへのコメント(*)
  • 研究者に対するPMからのコメント
  • 研究者に対する担当コンソーシアムメンターからのコメント

(*)の項目へのコメントは、HIRAKU-Globalが提供する研究者育成プログラムのコンテンツのうち、どのコンテンツが研究者の成長のために役立ったのか、運営側へのフィードバックとなります。

Achievement Cardの例示

課題

IDPでは、目標がSMART(Specific(具体的)、Measurable(測定可能)、Achievable(達成可能)、Relevant(関連性がある)、Time-bound(期限がある))の原則に基づいていることが重要です。これにより、目標が明確で追跡可能で、達成可能であることが確保されます。

しかし、これほどの条件を考慮しながら目標を立てなければいけないとなると、研究者個々の状況や個性によって異なりますが、Individual Development Plan (IDP) を作成および実行するプロセスを面倒だと感じることも否めません。また、IDPの作成には時間とエネルギーがかかることが考えられます。研究だけでなく、教育や大学の役務も抱える忙しい研究者が、自分自身を評価し、目標を設定し、行動計画を策定することは簡単な作業ではありません。また、IDPは定期的に評価され更新される必要があります。これには一定のコミットメントと労力が必要になるため、成功裏にIDPをすすめるためには運営側の配慮と工夫が重要なポイントになります。

ただし、これらの面倒な側面にも関わらず、IDPには多くの利点があります。具体的な目標と計画がない場合、個人の成長やキャリアの進展を見失いやすくなりますが、IDPは自己成長の指針を提供し、個人が目標に向けて進む際の支援となります。そのため、手間がかかると感じるかもしれませんが、その努力は将来の自分にとって大きな価値を持つと期待されます。

研究者の声

  • 必要な要素を自分の中で明確化できた上で(IDP)、メンターの先生から具体的なアドバイスをいただけた。
  • IDPにて大きな目標をはじめに設定し、それを達成するための小目標を立案した上で、達成状況のフィードバックや困難に対する助言をメンターから定期的に受けることができるというシステムが、最終的な目標を達成するために大いに役立つと感じた。
  • 自分のビジョンと課題と向き合うことができ、セルフマネジメントの能力向上に繋がった。