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国際学会の運営経験が研究者を育てる!国際学会活動支援を利用した高安先生、竹村先生にインタビューを行いました! | 取組紹介:国際学会活動支援ー国際学会における中心的な役割を目指してー

国際学会の運営経験が研究者を育てる!国際学会活動支援を利用した高安先生、竹村先生にインタビューを行いました! | 取組紹介:国際学会活動支援ー国際学会における中心的な役割を目指してー

概要

国際学会活動支援とは、国際学会においてチェア等の中心的な役割を担当する研究者を支援する取組です。
国際学会等に出席するための旅費や参加費等に充てることを想定し、50万円/年を上限とし、最長3年間の活動経費を支援します。小さな費用で大きな成果に繋げることも可能な取組ですので、自大学・自機関での導入の際には、ぜひ本ページをご参考にしてください。

実施期間

  • 最長3年間

実施方法

【支援者側のタスク】

  • 日本国内の大学等研究機関において常勤の職に就いている、研究キャリアがアーリーステージ(博士号取得後15年以内)の研究者に対して、50万円/年を上限として活動経費を支援します
  • 提案内容によって活動支援費の査定を実施し、申請額を決定します
  • なお、経費の使用用途は支援対象研究者が関与したい国際学会等に出席するための旅費や参加費等を想定しています

【研究者側のタスク】

  • 支援対象の研究者は、採択後に活動計画書を提出し、年度ごとに活動状況や経費に関する活動実績報告書を提出します

総合支援事業における過去の支援実績

採択年度:R3年度(2021年度)

氏名支援開始時の所属・職位取組名実績概要
高安 亮紀筑波大学 システム情報系・助教無限次元力学系に対する計算機援用証明を通した国際共同研究世界各国の研究者を日本に招待するなど、国際的な研究ネットワーク・コミュニティを構築。構築したネットワーク・コミュニティからも招待を受け、海外に滞在して共同研究や論文執筆を推進。

採択年度:R4年度(2022年度)

氏名支援開始時の所属・職位取組名実績概要
竹村 浩昌自然科学研究機構 生理学研究所・教授ヒト脳マッピング分野における国際連携ネットワークの創成OHBM(Organization for Human Brain Mapping)の委員会活動を通じて国際ネットワークを構築するとともに、コミュニティへ貢献。現在はOHBM Council Memberとしても活動。

総合支援事業で支援した研究者にフォローアップインタビューを実施し、国際学会活動支援の効果をお伺いしました

総合支援事業が過去に実施した国際学会活動支援が、支援対象の研究者の成長にどのように寄与したのかをモニタリングするため、フォローアップインタビューを実施しております。

今回は、総合支援事業PDの安浦 寛人先生をお招きし、国際学会活動支援をご活用いただいた高安 亮紀先生(R3年度採択)と竹村 浩昌先生(R4年度採択)にインタビューを行いました。

自大学・自機関で国際学会活動支援を実施した場合に、支援対象となる研究者にどのような効果をもたらすことが可能かの参考として、ご参照ください。。

※研究者の職位はインタビュー時のものを記載しております

国際学会活動支援の支援期間終了後の活動実績と成果

国際学会活動支援の支援期間が終了した後、どのような活動を行っていたのか、それらの活動からどのような成果が生まれたのかをお聞かせ下さい。

竹村浩昌先生(以降、竹村):

国際学会活動支援には、OHBM(Organization for Human Brain Mapping)での委員会活動のために応募しました。本取組の採択期間中に会員投票によってOHBMの理事に就任することができたことが非常に大きな成果となったと考えています。

R6年度はOHBMの理事だけではなくBrain Structure and Function というジャーナルのエディタも兼任していました。OHBMやBrain Structure and Functionの関係者を集め、ハイブリッド形式のシンポジウムを開催したりし、普段会うことのないような方々と新しいネットワークを作ることができたと考えています。また、OHBMを日本に招致するための招致委員会では委員長を務め、招致のための活動を行っていました。

R7年度は理事としての活動の最終年度であり、理事としての活動に熱心に取り組みました。Secretaryポジションとして活動をしているため、OHBMでの会議の議事録や、会長のサポートなどの業務を行っていました。また、学会の規則の改定に携わったり、次期理事の候補の選出に携わったりと国際学会のAdminとしての基礎的で幅広い業務を経験することができたので、実務として学会がどのように運営されているかを深く理解することができたよい経験となったと考えています。

研究においても、OHBMを通して様々なつながりを作ることができ、アメリカの教授が私の所属する生理学研究所を訪ねてくださり、講演をしてくださるといったこともありました。また、現在はOHBMを通して関係を構築することができた海外の研究者が2名、私の研究室に滞在し研究を進めています。熱心で優秀な海外の研究者がすぐ隣にいることが、研究室の他のメンバーに対してもよい刺激となっているように感じます。

海外の研究者がわざわざ訪ねてきてくれることは自分が信頼されている証であると思っているので、うれしく感じるとともに非常によい傾向であると考えています。

竹村浩昌先生(自然科学研究機構 生理学研究所 教授)

安浦寛人PD(以降、安浦):

国際学会のポジションにつき、雑用を含めていろいろな業務を経験することは信用を勝ち取り、その分野における世界の研究者とのパイプを作ることにつながる非常に重要なステップであると理解しています。

高安先生はいかがでしょうか。

高安亮紀先生(以降、高安):

R6年度は本取組を通してつながった海外の研究者と国際共同研究を進めていました。3か月ほどカナダに滞在して自分と同じ分野の研究者と問題を解き、それについての論文を書くといった貴重な経験をすることもできました。自分の研究内容をカナダの学生に読んでいただき、感想をいただいたことにとても感動したのをよく覚えています。

R7年度の活動では、創発的研究支援事業に採択されたことが最も大きな成果であると考えています。これにより自身の研究室の環境を整えることもでき、研究室のメンバーも徐々に増えているといった状況です。研究においては、自身の海外とのコネクションを活かして活動しています。最近は、日本の若い研究者をたくさん育てられる環境を整えたいという気持ちが強くなり、来年度から他大学のPhDの学生を研究室に受け入れることになりましたし、海外の研究者を受け入れる話もでております。また、来年度は京都大学の数理解析研究所の研究集会を企画することになっております。加えて、ギリシャで開催されるアメリカの数学会のシンポジウムの企画にも携わる予定です。

国際学会活動支援に採択されている間に生まれた研究者同士のネットワークや自身の海外とのコネクションがさらに広がっているように感じており、その中で様々な研究に触れ、刺激をもらうことができたことが今の成果につながっているように感じます。支援金額以上に多くの方との関わりの中で得た教訓が今に活きていることを実感しております。

高安亮紀先生(筑波大学 システム情報系 准教授)

安浦:

本取組を有効に活用していただき、新しいネットワークを広げていらっしゃるのは素晴らしいことだと思いますので、引き続きネットワークを拡大できるよう努めていただければと思います。

遭遇した課題やその解決策

遭遇した課題やその解決策について教えてください。

竹村:

R6年度からR7年度にかけては、国際学会などの大きな組織の運営への貢献と、自分自身の研究時間の確保の間でどのようにバランスを取るかというのが課題でした。若手は組織運営ではなく、自分の研究に集中するべきだという意見もありますし、学会に携わることが本当に意味のあるものなのかどうかわからなくなってしまうこともあったため、自分のなかで折り合いをつけるのが難しいと感じました。ただ、マネジメントレベルの高難易度の仕事を近くで見ることができたのは長期的に見れば間違いなくプラスの経験となると思います。

R7年度は世界情勢によって研究活動に影響が出てしまったことが課題でした。特に国際共同研究は世界情勢に大きく影響を受けますので、海外から研究者を呼ぶことが出来なかったりしたことが大きな課題でした。自分の力ではどうすることもできない問題でしたので、現状に対して冷静に対応するよう努めました。

安浦:

研究活動が世界情勢の影響を受けてしまったことに関しては、非常に難しい課題だったかと思いますが、この経験は、将来、竹村先生が学術会議や委員会のメンバーとなった際に必ず活きてくるものだと思います。

小泉周PO(以降、小泉):

どうしようもない部分もありますが、影響を受ける可能性があることを知っているのと知らないのとでは、大きな差が生まれてくると思います。

竹村先生のお話を聞いて、改めて、研究活動では様々な可能性を念頭に置く必要があると感じました。

高安先生はいかがでしょうか。

高安:

R6年度においては、研究関係の資金繰りが課題となっていました。日本に海外の研究者を招待したり、研究コミュニティを広げるためのお金が足りず、個人のグラントを活用して何とか対応しましたが、研究資金との兼ね合いもあり非常に難しい状況でした。

R7年度においては、自身の研究活動と大学業務の両立が課題でした。所属する学部の委員会であったり、採点業務に時間がとられてしまい自分の研究活動になかなか時間を割けない状況が続いておりましたが、夜中に研究を行うなどして対応しました。しかし、このように自分の身体を犠牲にして解決するのは持続可能性がないと思いますので、何かしら違う解決方法を検討したいと考えています。この問題は大学の人材が不足していることが根本的な原因であり、一研究者として解決をすることは難しいかもしれませんが、業務が残っているにもかかわらず、人材は減っていく現状を何とかするために、現場レベルでできることに取り組んでいきたいと考えています。

安浦:

高安先生のお話を聞き、先生方のご年齢の研究者に大量の仕事が集中してしまうことは日本全体に共通する問題であると改めて実感しました。

若手研究者を支援する制度に必要な要素

本事業と同じように若手研究者を支援する制度(研究費、奨励金、渡航費支援等)を設計する際の参考にさせていただきたく、若手研究者にとって魅力となるポイントや応募のモチベーションとなる要素・仕掛けとして考えられるもの、その他、忌憚のないご意見をお聞かせください。

竹村:

本取組に対しては、変えたほうがよいと思う点は無いというのが正直なところです。

私は自分のやりたいことと公募の内容が合致していれば、支援金額が少なくても申請し、たとえ支援金額が多くても自分のやりたいことと合致していなければ申請しないタイプの人間です。本取組は、申請の段階でやりたいことを明確化し、それに対して緩やかに取り組むことができる設計となっているため、非常に活動がしやすかったと感じています。

本取組を超えて日本全体の規模で若手研究者の支援を行うとなった際は、シームレスな設計となるよう考慮すべきだと思っており、具体的には段階的な支援を行うのがよいと考えております。

最初は少ない金額を国際会議に参加するための旅費やネットワーキング、シーズ探しのために支給し、次の段階では少し金額を上げて、中規模の国際シンポジウムの主催などが可能となるように支援します。そして最終段階として国際共同研究のための研究費などを支援することができれば、切れ目のないシームレスな取組になるのではないかと思います。

現状の国際共同研究の支援は、極端に金額が小さいものと金額が大きいもので二極化しているような印象を受けます。支援金額が小さすぎてもマッチングのみで終わってしまいますし、大きすぎても若手研究者は気軽に申請することができないので、ちょうどよい資金規模の支援があればよいのではないかと思います。

安浦:

全体の制度設計を考え直すことは文部科学省を含め、様々な組織で検討すべきことだと思います。大変貴重なご意見をありがとうございます。

高安:

竹村先生の意見に賛成です。最初はシーズ研究費として好きなことを追求しながら、多くの研究者とのネットワークを構築するための資金を支援し、そのなかで芽が出たテーマに対して更なる支援を行う段階的な支援を行う取組は、現状ではあまりない気がするのでとてもよいアイデアであると思います。

それに加えて、私は人件費に充てることができる研究費を支援する取組があればよいと考えます。類似する取組は少しずつ増えているように感じますが、絶対数はまだまだ足りていないと思います。PIはもちろん修士課程や博士課程の学生を雇うためのお金があれば研究室の規模拡大にもつながるので日本全体の研究力向上につながるのではないでしょうか。

また、アメリカのグラントのようにPI自身がポスドクを雇うための人件費を持っており、ポスドクを雇うために研究費をとってくるといった好循環を生み出せるシステムがあればさらによいと思います。日本の制度とマッチしない部分があり実現は難しいかもしれませんが、例えばバーチャルな研究室を作り、そこに所属するPIが自由に使える研究費を設定することなどができれば、より自由度の高い研究活動が可能になると思います。

安浦:

今日までの日本では、研究環境の整備として研究装置などのモノを充実させることを中心に考えてきたことがこの問題の根本的な原因であると思いますので、本事業でも、これからは人が国の研究力を高めることを積極的に発信し、声を上げていきたいと思います。

世界で活躍している状態・世界で活躍できる研究者とは

「研究者が世界で活躍している状態」「世界で活躍できる研究者」のイメージがあれば教えていただきたいです。

竹村:

私は、世界で活躍する研究者とは「孤独であるが、孤独ではない研究者」だと思います。
研究者は、どれだけ人脈が広くても、それだけで国際的にキーパーソンとして認知されることはありません。研究者である以上、研究や科学の探求においては、自分自身の思考と向き合う“孤独”が不可欠です。しかし一方で、完全な孤立状態では、社会や国際コミュニティの中で活躍し続けることはできません。

そのため、研究コミュニティの運営に貢献したり、自分の意見を積極的に発信したりして、研究以外の部分で他者とつながり、信頼を得ることが重要です。このような、研究の場では自立した孤独を保ちながら、社会的には信頼を築くことができる研究者こそ、世界で活躍できる研究者なのだと私は考えます。

また、流行しているテーマだから、という外部的な基準ではなく、自分の哲学に基づき、本当にやりたい研究を追究できる人が最終的には世界から認められ、分野の中核を担う存在になると思います。こうした研究者に対して、外部から研究テーマを与えることは、むしろ自由な発想を妨げてしまうため、分野の中心となる独創的な研究者を育てるためには、自由度の高い研究費の存在が不可欠です。

つまり、世界で活躍できる研究者を育成するためには、「やるべきことをきちんと果たす研究者には、できるだけ自由に研究させること」が重要だと考えています。

もちろん研究費の多くは税金をもとにしておりますので、すべての研究者に無制限に自由な研究をする機会が保障されるべきだとまでは考えていません。しかし、研究者としての基本的な責務を誠実に果たしている人が、自由な研究費を活用できる仕組みは必要だと思います。

高安:

私の周囲にも世界で活躍している研究者が数名いますが、彼らに共通しているのは、「外部から人を呼び込み、研究コミュニティを広げる力を持っている」という点です。自分の研究分野に近い領域の研究者を巻き込みながらコミュニティを拡大し、新しい研究の流れを生み出していける人こそ、世界で活躍できる研究者なのだと感じています。

このような研究者を育成するためには「放置して好きな研究をやらせる環境」が必要です。 一度、アメリカのカリフォルニア工科大学にあるアメリカ数学研究所のプログラムに参加させていただいたことがありますが、そこでは研究所の一フロアにコーヒーだけが用意され、設備も自由に使ってよいというシンプルな環境の中、「あとは参加者だけで好きにやってください」というスタイルが徹底されていました。 箱だけを用意し、研究者にすべてを任せるという形式は非常に新鮮でしたが、参加者は皆、放っておけば自然と論文を書き始めるような研究者ばかりで、私もわずか1週間のプログラムで2本分の論文アイデアを構築できるほど、生産的な時間を過ごしました。 日本にもこのように「ほっとけば勝手に研究を進めてしまう」タイプの研究者は数多く存在すると考えています。だからこそ、そうした研究者が自由に論文を書き、アイデアを発展させられる仕組みがあれば、研究の生産性は大きく高まると思います。

今後の計画や目標

来年度に達成したい短期的な目標や10年スパンで達成したい長期的な目標や計画をそれぞれ教えていただけますでしょうか。

竹村:

長期的な目標としては、自分がプレイヤーとして研究をこなすだけではなく、教育者として大学院生などを育て、彼らがちゃんと研究できる仕組みを作っていくことに貢献したいと考えております。

自分の研究室を持たせていただいている以上、種だけを撒いて、あとで野菜を収穫するというわけにはいきません。しっかりとその間に畑を耕す、つまり学会運営に貢献をすることで良い成果が出やすくなる仕組みを作るですとか、あるいは研究室の環境を整えるなど、いわゆる「Admin」と呼ばれる地道な努力をきちんとやることが研究室主宰者としての責任だと思いますので、自身の研究を過剰に圧迫しない範囲でこのようなことに取り組むことができればと考えております。

短期的な目標としては、共同研究先のバランスをとることに取り組みたいと考えています。これまで国際共同研究の相手国がやや偏っていたと思いますので、来年度以降は幅広い国の研究者とのインタラクションを増やし、関係を構築していきたいと考えています。欧米圏だけではなくアジア圏の研究者に対しても、合同でシンポジウムを開催したり、大学院生を受け入れたりして交流機会を増やし、国際共同研究や国際的な貢献のあり方のバランスを考えていきたいと思います。

高安:

短期的な目標としては来年度の京都大学の数理解析研究所の研究集会とギリシャで開催されるアメリカの数学会のシンポジウムにおいて、知り合いの研究者とともに研究する機会を設け、さらに研究内容を発展させていきたいと考えております。

長期的な目標としては、やはり研究者を育てたい想いがありますので、自分が海外で学んだこと・経験したことを、今度は国内で同じように再現したいと考えております。そのための第一歩になるかはわかりませんが、アジア圏でのネットワークを拡大し、アジアにも強い研究グループがあると世界に認知されるような、人脈づくりや育成に取り組みたいと思います。自分だけではなく、自分の教え子が世界で活躍するような体制を日本で作っていければよいと思います。

参考資料