学際融合研究交流会「TI-FRIS/FRIS Hub Meeting」

東北大学TI-FRISのGPである「学際融合研究交流会「TI-FRIS/FRIS Hub Meeting」」(以降、Hub Meeting)では、様々な研究分野から参加するフェローが、自身の専門分野とは異なる分野の研究発表を聞き、英語でディスカッションをすることで、学際融合に取り組んでいます。
この度、総合支援事業の安浦PD、小泉PO、事務局がHub Meetingの考案者である當真教授、コーディネーターの藤原特任准教授、上野特任准教授、波田野特任准教授、TI-FRISフェローの関准教授にインタビューを行いました。
※先生方の所属・役職はすべてインタビュー時のものです
Hub Meetingを通して得られた効果や変化
関まどか准教授(以降、関):
専門分野外の研究者に自分の研究内容をわかりやすく伝えなければいけないので、発表の際はかなり緊張しました。また、準備にも時間がかかるため、最初は正直ストレスを感じていたと思います。
当日は東北大学に伺いオンサイトで発表を行いましたが、いざ発表をしてみると、多くの先生方が真剣に耳を傾け、積極的に意見をくださり、非常に有意義な時間になりました。参加者は幅広い分野から参加する研究者なので、私の発表内容が全員に直接メリットを与えるわけではないと思います。
しかし、その中でも「自分が持っているスキルや知識をどのように活かせるか」「具体的にこのようなことができる」とアイデアを参加者が出してくださり、私にとっては本当にプラスしかない経験でした。
特に山形大学の小林翔先生からいただいたアイデアはまさに自分がやりたかった研究そのもので、Hub Meetingをきっかけに科研費を獲得し、共同研究にまで発展しています。このような結果も含め苦労の甲斐のある非常に有意義な経験だったと思います。

小泉周PO(以降、小泉):
波田野先生と上野先生も過去にご発表経験があると伺いましたが、発表時はどう感じられましたか?
波田野悠夏特任准教授(以降、波田野):
私は当時「復顔」といって、古い人骨から生前の顔を復元する研究を行っていました。TI-FRISの先生方は理工系の研究者が多く、復顔はそこから少し外れた研究分野なので、わかりやすいプレゼンテーションを考えるのに苦労しましたが、当日は皆さんに興味を持って聞いていただけたと感じています。
実は私も小林先生に声をかけていただき、科研費の獲得まではいきませんでしたが、コラボレーションを行っていました。小林先生は食品由来成分の研究をされていて、私の研究分野にはミイラや即身仏も含まれるため、「食事としての植物の摂取がミイラや即身仏にどのような影響を与えるか」を研究したいと声をかけていただきました。以降は、私が参加していた日本人類学会に小林先生に参加いただいたりと様々な交流が生まれました。
東北大学のTI-FRISフェローはHub Meetingにオンサイトで参加をされることが多いので、Hub Meetingをきっかけに、TI-FRISに参画している他大学のフェローとの交流機会が生まれているように感じます。個人的には、オンサイトで実施することが大きな起爆剤となっているように考えており、小林先生とのコラボレーションもオンサイトでなければ実現できなかったと思います。Hub Meetingでの出会いを通して、学内の別の研究者を紹介するといった機会も生まれるので、TI-FRISの内側と外側、両方に対して起爆剤となりうる有意義な取組だと思います。

小泉:
上野先生はいかがでしょうか?
上野裕特任准教授(以降、上野):
本当にお二人のコメントのとおりだと感じています。私はTI-FRISを異分野の研究者の話を聞く機会がかなり豊富な場所だと感じており、ここでしか起こりえないミキシングを起こすきっかけの場がHub Meetingだという印象を受けます。
自分の研究を続けていくと、交流する研究者は必然的に限られてきます。例えば、私は化学を専門分野としているので、日本化学会に参加してもおそらく自分の研究と関連した分野のセッションをずっと聞くことになると思います。このような自分のフィールドの活動では経験することができない、異分野の研究者の発表を聞くこと、自ら異分野の研究者に向けた研究発表を行うことを積極的に経験することができるのがHub Meetingの魅力です。
そして、TI-FRISがFRISと同じ屋根の下で事業を行っている環境だからこそうまく機能しているのだと思います。こうした機会を継続的に設けることで、他分野の研究者とのつながり方が鍛えられ、関先生や波田野先生のおっしゃったような新しいコラボレーションにつながるのだと考えています。當真先生がHub Meetingを作った理由もこのようなところにあるのではないかと思います。

Hub Meetingが生まれた理由
當真賢二教授(以降、當真):
Hub Meetingを考案したきっかけはいくつかありますが、最初は任期付きのFRIS研究者として何かを成し遂げたいと考えたことがきっかけでした。
当初、私は助教としてFRISに参画していたので、任期が終われば、次のポジションに応募するつもりでいました。そして、その面接の際には「FRISで何を成し遂げたのか」が聞かれると思い、全く専門分野の違うFRISの同僚と何かを成し遂げなければいけないと考えて、大学院生も巻き込んだ「全領域合同研究交流会」を立ち上げました。Hub Meetingはその「全領域合同研究交流会」と並行したもので、主に教員だけのハイレベルな会として考案しました。
いざ実践してみると、違う研究分野の先生方のお話が聞けて面白い反面、話がかみ合わないという難しさも同時に感じていました。

小泉:
考案者の目線からHub Meetingにはどのような効果があるとお考えですか?
當真:
Hub Meetingには共同研究を生み出すことなど様々な効果があると思いますが、自分の研究の「面白さ」を見つめなおすことができるのが中でも重要な点だと思います。
先ほど関先生もおっしゃっていましたが、自分の研究に興味がない人に自分の研究の「面白さ」を伝えるべく、プレゼン構成を考えることは、実はかなりストレスの大きい作業なのです。通常の学会であれば、参加者が同じ分野を研究しているため、研究の「面白さ」は暗黙の了解として共有されており、改めて自分の研究の「面白さ」を考える機会はほとんどありません。
一方、Hub Meetingは様々な分野の研究者が参加するため、このような暗黙の了解がなく、自分の研究の「面白さ」を見つめ直し、明確化するよい機会になります。そして、自分の研究の「面白さ」を突き詰めることこそが、自分が本当にやりたいことを見極めるための、きわめて重要なステップなのです。
また、Hub Meetingに参加することで研究費獲得のコツを体得する効果も期待できると考えています。
例えば、額の大きい科研費などは審査員が専門分野外の研究者となることがあります。そのため、日頃から異分野の研究者に自分の研究の「面白さ」を伝えるトレーニングをしておくことで、申請書の書き方にもよい影響があると考えております。
加えて、Hub Meetingには「研究コミュニティを変える」という側面もあるように感じています。大学の研究者コミュニティはそれぞれ課題や問題を抱えていますが、中にはコミュニティを超えて共通するものも存在します。Hub Meetingを通して、異分野の研究者と交流することで、こうした部局間で共通する問題に気づき、部局横断的な解決策を生み出すきっかけとなることもあるのです。
さらに、若手研究者を審査する立場の准教授以上の研究者にとってもHub Meetingは非常に有用です。様々な若手研究者がそれぞれの研究を発表するため、自分の専門分野外でどのような研究がおこなわれているかを知る情報収集の場になります。
まずは取組を維持すること
小泉:
ネットワーク形成の側面から考えると、Hub Meetingの規模感は大きすぎても小さすぎてもいけないように思いますが、GPとして他大学に普及するにあたってどの規模感で実施するのが効果的であるとお考えですか?

當真:
効果的な規模を考えるより、まずは取組を維持できる規模を確保するほうが重要だと思います。研究者は基本的に自分の研究コミュニティの中で研究を進めるほうが効率的で居心地もよいため、どうしても自分の研究分野に戻ろうとします。新しい視点を得られるとしても足が向かないのが現実なので、まずは取組を維持できるだけの規模を確保することが必要です。
安浦寛人PD(以降、安浦):
東北大学では学際科学フロンティア研究所(FRIS)という組織があったからこそ、この取組の規模を維持できたのでしょうか?

當真:
少なくとも、理由の一つにはなっていると思います。Hub Meetingを始める際、東北大学学際科学フロンティア研究所の早瀬所長が開催頻度を毎月に設定しました。月1の教員会議と同日にHub Meetingを開催し、教員の参加を必須としたことで、取組として定着したと感じています。もし、取組を始めた直後に自由参加としていたら、ここまで継続できていなかったと思います。
藤原英明特任准教授(以降、藤原):
Hub Meetingはもともと東北大学学際科学フロンティア研究所(FRIS)の取組として始まったものでしたが、そこにTI-FRISが合流し、合同で開催するようになりました。TI-FRISフェローの研究者の参加は、必須となっています。

研究者をサポートする研究者
安浦:
波田野先生と上野先生は、コーディネーターという、ある意味他の研究者のサポーターのような位置づけで活動されていると思いますが、どのような理由でコーディネーターを目指されたのでしょうか?自分の研究ではなく他人の研究に時間を割くことに抵抗はありませんでしたか?
上野:
他人の研究に時間を割くことに対する抵抗は全くありませんでした。むしろ人と人をつなぐ仕事や企画はもともと好きで、助教時代からかなり時間を使っていました。いろいろなことに取り組んでいるうちに當真先生に声をかけていただき、現在はコーディネーターとして活動することができるようになったので、その意味では非常に高いモチベーションで取り組んでいます。
Hub Meetingを成功させるためには、月1回の集まりだけではなく、日常的に交流を活発化させる必要があると考えています。そのため、FRIS CoREを立ち上げたり、研究者同士の交流の場を増やすための取組を積極的に行っています。當真先生に声をかけていただいたのは、東北大学が国際卓越研究大学に選ばれる直前の時期でした。自分の研究で実績を積むことと、コーディネーターとして東北大学の国際卓越研究大学選定に貢献することを天秤にかけた結果、コーディネーターとして活躍するほうがより大きなことを成し遂げられると判断しました。ですので、ネガティブな理由ではなく、非常にポジティブな理由で今のポジションを選択することができました。
食わず嫌いに食べさせてみる
小泉:
FRISの組織下で、ある程度の強制力を持たせつつ、コーディネーターの先生方もうまく連携することで本取組の維持が可能となっていと思いますが、参加に対するインセンティブはあるのでしょうか?
藤原:
参加に応じた研究費の支給といったインセンティブはありませんが、Hub Meetingをきっかけに生まれた共同研究に対する研究費支援の制度「学際融合研究支援」が整備されています。大きな金額ではありませんが、外部研究費の獲得までのシードとなる研究費を支給する仕組みとして活用されています。
波田野:
Hub Meetingへの参加は必須であるため、特別なインセンティブはないと思います。ただ、先輩フェローがHub Meetingをきっかけに様々な共同研究を生み出しているため、自分の研究の幅を広げるために活用する研究者は多いと考えています。共同研究が生まれる瞬間を目の当たりにすることがモチベーションにつながっているのだと思います。
當真:
学際融合研究に対しては、食わず嫌いをしている研究者が多くいるため、最初はやや強引にでも背中を押し、一度経験させることが重要だと思います。
コミュニティを引っ張るアトラクター
安浦:
Hub Meetingのような取組を他大学が採用する際、すべての仕事をURAに任せようと考えるかもしれませんが、URAだけに任せきりにしてはいけないということですよね?
波田野:
そうですね。研究者自身が積極的に動く必要があると思います。
當真:
関わる人数は多ければ多いほどよいと思います。URAだけではなく、事務のメンバーが協力してくれることも、東北大学で本取組がうまく存続している理由の一つだと思います。システムだけを作っても、実行する人がいなければ取組を維持することはできません。大学の上位の立場にある研究者が率先し、研究者全体が同じ方向を向くことが重要なのではないでしょうか。
小泉:
アトラクターとなる研究者が周りを引っ張り、新たなアトラクターを育てることで取組を維持・拡大する必要があるということですね。
當真:
そのとおりです。参加者を集めることも大変ですが、集めた後にも課題はあります。オンサイトで集まると、席に着いた研究者はまずPCを開きます。しかし、PCを開いたまま発表を聞いても、発表者からは真剣に聞いているようには見えず、積極的な交流を阻害する要因となってしまうため、研究者にPCを閉じさせることも重要な点です。
そこで「PCを閉じましょう」と発言できる研究者がいるかどうかがポイントになると思います。
波田野:
Hub Meeting終了後に研究者同士が自由にディスカッションすることも非常に重要だと思います。その意味では、顔が見える範囲の規模感が最も効果的かもしれません。また、コロナ禍でのオンライン形式の交流会があまりうまくいかなかったことを考えると、オンサイトで面と向かって議論することもポイントであると思います。
しかし、Hub Meetingのアーカイブ動画を見て、発表者の研究者に連絡をとる方もいらっしゃるため、オンサイトに加えてアーカイブ動画も残すなど、バランスを取りながら運営することも大切だと思います。
藤原:
東北大学以外のTI-FRIS参画大学からHub Meetingに発表者として参加する研究者は、基本的にはオンサイトで参加するため、東北大学に足を運ぶことになります。その際に他の参加者との間で生まれる雑談や発表後のディスカッションに共同研究のヒントが隠れていることもあるので、オンサイトで行うことは重要だと思います。
上野:
Hub Meetingの参加に対するインセンティブとしてお金を使うのではなく、Hub Meetingで生まれた成果を形にすることにお金を使うことが大切なのだと思います。
(※事務局注:学際融合研究支援を参照)